環境心理学会第5回大会におけるワークショップの内容が決まりましたのでお知らせします。

場所愛着・再考 東日本大震災と原発事故をめぐって

企画者

雨宮護(東京大学)
島田貴仁(科学警察研究所)

発表者

大野隆造(東京工業大学)
引地博之(東北大学大学院)
渡部陽介(東京大学大学院)

指定討論者

太田裕彦(関西国際大学、日本環境心理学会長)
大谷華(立教大学)

場所愛着(Place Attachment)は「人間と場所との精神的な絆」(Altman, 1992)と定義され、その研究は環境心理学の中で重要な位置を占めている。

場所愛着が議論される場面のひとつに、災害にまつわる移転(Relocation)がある。日本では、これまで、阪神大震災後の仮設住宅や復興計画、三宅島からの全島避難などにおいて、場所愛着が議論されてきた。しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災とその後の原発事故では、高台への集団移転、長期化が予想される原発からの避難などが絡み合う、これまでにない複雑な問題となっている。場所愛着に関わる議論も再考される必要があろう。

日本環境心理学会が発足5年の節目を迎えた今年、本ワークショップでは、建築学、心理学、造園学の立場から環境心理学に取り組む研究者から話題提示をいただき、場所愛着について学際的に議論することで、震災復興に際しての環境心理学からの貢献の可能性について考えることとしたい。

まず、大野氏には、これまで氏が取り組んでこられたさまざまな環境における場所愛着に関する研究結果をもとに、国内外の復興住宅の事例を紹介しつつ、それと住民の場所愛着の関わりについての話題提示をいただく。

引地氏には、氏がこれまで社会心理学の中で取り組んでこられた地域コミットメント研究と場所愛着との関連とともに、震災後に宮城県内に取り組んでこられた研究について話題提供をいただく。

渡部氏には、ランドスケープの保全を通じた場所愛着の継承の方向性と今後の課題について、震災以前から福島県内で取り組んでこられた氏の研究成果を織り交ぜながら、話題提供をいただく。

指定討論者としては、太田氏からは、地元での阪神大震災の経験を踏まえながら、環境心理学の今後についてコメントをいただく。また、大谷氏からは、ご自身の場所愛着研究と、今回の東日本大震災の関東での経験を踏まえコメントをいただく。