日本環境心理学会会員の皆様
第9回大会シンポジウムについてお知らせいたします。
環境心理学会第9回大会 シンポジウム「地域と健康」
2016年3月19日(土)15時から17時
文京学院大学ふじみ野キャンパス
(東武東上線 ふじみ野駅からスクールバス)
http://www.u-bunkyo.ac.jp/about/page/schoolbus.html
1.「居住地周辺緑量の数値地図を利用した分析」
相模女子大学人間社会学部人間心理学科 芝田征司先生
最近行った調査では,自然との心理的つながりの強さと居住地周辺の自然の多さとの関係について検討するために,回答者の郵便番号をジオコーディングし,それによって得られた地図座標と国土地理院発行の数値地図とを組み合わせて,各対象者の居住地域周辺の緑量を算出するという方法を用いました。地理的・空間的情報の利用は,他の分野・領域で近年盛んに行われるようになっています。日本心理学会でも数年前に地理情報システム(GIS)の利用についてのシンポジウムが開催されましたが,心理学領域ではこうしたシステムの利用はまだまだメジャーではないようです。そこで、今回は、心理学研究における使用例の1つとして,拙研究の場合を紹介したいと思います。
2.「高齢者の閉じこもり:地域における出現率の比較、うつ傾向との関連」
文京学院大学人間学部心理学科 山崎幸子先生
自治体の協力の下、地域を限定し郵送調査、留置調査によって調査した結果から、高齢者の閉じこもりについて言及します。具体的には、東京都荒川区、秋田県にかほ市、福島県大玉村で実施した調査結果を元に、都心と農村地域においてその環境が閉じこもりの出現率に差があるかどうか、地域性に言及しながらその差異についてデータから読み取れる点について検討します。あわせて、各地域における閉じこもりとうつとの関連について、違いが認められるか、地域性の影響の可否についても言及したいと思います。
3.「地域研究における「場所」と「空間」の問題」
東京大学大学院医学系研究科 高木大資先生
お二人のお話を踏まえて、研究手法についてのさらなる深掘りを試みます。まず地域研究における生態学的誤謬の観点から、生態学的分析とマルチレベルモデルの話をします。次いで、地域のマルチレベルモデルにおける集計単位問題(MAUP)を取り上げ、そこから空間分析の話に展開します。各分析の説明では、私が以前に行った、犯罪被害、健康、心理社会的変数(集合的効力感や近隣での協力行動)などをアウトカムにしたいくつかの実証研究を紹介しながら議論を進めたいと思います。これらの議論を通じて、「心理学でも場所や空間を考慮した分析が利用可能である」ということと、「地域における心理学研究なら、むしろ場所や空間を考慮したほうがよい」というメッセージをお伝えできればと思います。